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カーボン・オフセットの現場に潜入する

森を元気にし、切った木は有効活用する ~高知県の森林間伐の取組~

森を元気にし、切った木は有効活用する

全国で取り組まれているカーボン・オフセットの取組をご紹介する「プロジェクト潜入企画」。
それぞれのプロジェクトをのぞいてみると、取り組んでいる人々の熱い想いやさまざまな“声”が聞こえてきます。
カーボン・オフセットでは、森林の間伐(かんばつ)や植林の取組を応援することもできます。ところで、この「間伐」ってどんな取組なのでしょうか?
今回潜入するのは、森林の間伐を積極的に推進している高知県です。
取組を行っているみなさんに、実際の現場を見せてもらうことになりました。
どのようなお話が聞けるのでしょうか。行ってみましょう!

日本は森林大国

国土面積の約7割が森林に覆われている日本。先進国のなかではフィンランドとスウェーデンに次いで3番目の森林大国です。

森林には、おもに自然の力で育った「天然林」と、木材を作るために人が苗木を植えた「人工林」の2種類あります。生えている木々にも大きな違いがあります。今、この「人工林」にある問題が起きています。
それは、植栽後30~50年が経ち、収穫期を迎えた木々が“密集”してしまっていること。満員電車のような状態になっているといいます。

手入れがされていない人工林の木は細く、太陽光を求めて木が曲がっていくといいます。さらに栄養不足で葉は茶色くなり、枯れていってしまうそうです。
二酸化炭素の吸収源として大きな役割が期待されている森を、元気にしなければ……。

日本は森林大国

今、森林には間伐こそが必要

そこで注目されているのが、過密になった木々の一部を切ることで森の木を減らす「間伐(かんばつ)」です。残った木が生長するときに、二酸化炭素を多く吸収できるため、地球温暖化対策にもなっています。
(一社)高知県山林協会の植田豊さんは、地元の約10校の小学校を受け入れ、高知県立甫喜ヶ峰(ほきがみね)森林公園で、小学生にその重要性について伝える体験教室を行っています。
「間伐は、森林を明るく保ち、残った木をまっすぐ大きく育てるために行います。県内の森林面積は全国1位であるのに対して、高知県の森林のうち人工林の面積は65%で、全国第2位なんです。今、間伐が非常に求められています。子どもたちには、間伐のメリットについて説明しています」(植田さん)

そのメリットとは、次の6つだそうです。
1、豊かな水を森林の土壌が貯えることで、雨がゆっくり川へ流れて洪水を和らげること。
2、木が根を張って土や石をつかむようになり、土砂崩れを防げること。
3、木は生長するときに、地球温暖化の原因になっている二酸化炭素を吸収すること。
4、暮らしに必要な木材が生産できること。
5、森林が多様な生物を育むこと。
6、森林が人々に安らぎを与える生活空間になること。

今、森林には間伐こそが必要

「実際に森で子どもたちに『どの木を切ったらいいと思う?』と聞くと、実に正しい選択をするんですよ。細い木や、曲がったり弱ったりしている木を自然に選ぶんですね」(植田さん)

専門家ではなくても、健康な森とそうではない森の区別はすぐつくようです。実際に写真を見れば、たしかに一目瞭然。

子どもでもできるノコギリによる間伐

植田さんが子どもたちに教えている間伐の方法は、次の通りです。使う道具は、身を守るためのヘルメット、木を切るノコギリ、チョーク、くさび、ハンマーなど。

「ノコギリで、木に左右から二種類の切り込みを入れます。この切り込みは、倒していく側の『追い口』と、倒れる方向の『受け口』といいます。倒す方向は、風の方向や見上げたときの枝ぶりによって決めていきます」(植田さん)

次に、ハンマーでくさびを打ちます。こうすると少しずつ倒れるので安全だそうです。 決めた方向により正確に倒すため、周囲の木を使ってロープをV字に張り、人は追い口の方向に立って、ロープで導いて倒していきます。倒れるときには合図として笛をふき、注意を促すそうです。

「ほとんどの子どもが初めての間伐体験で、山に興味を持ってくれるようです。質疑応答タイムでは、『どれくらいの大きさの木になれば、家を建てる材料に使えますか』など、木にまつわる質問が多いのですが、なかには『どうして山のお仕事をしようと思ったのですか?』などと聞く子もいます。
これからも、森を元気にしていく間伐活動の意義について、多くの子どもたちに伝えていきたいと思います」(植田さん)

空中で運ぶ!? 間伐推進企業のスゴい取組

高知には、国内でも有数の間伐推進企業、株式会社とされいほくがあります。代表取締役副社長の半田州甫さんに話をお聞きしました。

「日本には、まだ間伐できていない森がいっぱいあります。そこで我々は間伐を通して、徹底的に豊かな森をつくることを目指して活動しています。豊かな森とは、環境に良く、いい資源を作ることで経営的にも成り立つという、二点が両立した森林のことです。

森林の健全性のバロメーターは、下層植生(森に小さな木が草が生えていること)ですね。いい木を残してそれを傷つけないように育てながら、下層植生をも豊かにしていくことこそが重要です」(半田さん)

そう熱く語る半田さん。昭和37年から県庁に勤め、林業の担当をしていたといいます。「県庁で林業マンをしているときから、山主さんが造林して、その後も苦労してきているのをずっと見てきました」。林業の現状を少しでもなんとかしたいという半田さんの想いで始まった同社の活動。間伐の様子を見学させていただきました。

それは、情熱を示すかのように、とにかくスケールが大きいことが特徴!
まず、三人で作られたチームがチェーンソーで間伐をします。木1本につき1分ほどで切ってしまうそうです。

空中で運ぶ!? 間伐推進企業のスゴい取組

なんとそれを、山に大きく渡すように設置したワイヤーケーブルで吊り上げ、間伐材を空中で運んでいくのです。
「実は、間伐でもっとも大変なことは、切った木を山から道へ搬出することなんです。民家があって道が細いところや、電線などがある場合は、大きな車両を山へ入れることができません。そこで、こうした取組をしています」(半田さん)
この仕組みを「H型架線」と呼んでいるそうです。山の中央に、ケーブルの始点となっているポイントがありました。遠くから見ても確認できます。

いい森を作り、間伐材を無駄なく使い切る

現場で作業をしていた勤務6年目の上村さんにお話をうかがうと、使う道具は、ワイヤーカッターとクリップをとめるソケット、チェーンソー、くさび、ハンマー、燃料オイルなど。

いい森を作り、間伐材を無駄なく使い切る

「切るときにチェーンソーでけがをしないよう注意するのはもちろんですが、木を倒すときに退避することや、架線で木を運ぶ際に落下しないようセッティングすることも大事です。
冬は雪があって大変ですよ。歩くだけでも一苦労です。防寒にも気を配ります」(上村さん)

国内で多く行われている間伐は「列状間伐」といいます。その字の通り、1列に木を切っていく方法です。搬出しやすいものの、残った木々の密度が高い問題点もあり、半田さんはこれを採用しませんでした。
採用したのは、残す木を選木する「定性(ていせい)残樹選木間伐」。残された木々が生長しやすい十分な空間を与える間伐を行っています。これこそが、同社の大きな特徴だそうです。

「定性間伐により、本数間伐率40~50%の強度間伐を実施しています。強度間伐とは、森林の過密な状態を健全な状態にもっていくために、思い切った間伐を行うことです。長年間伐されていなかった森林は、木々が密集しすぎて大変不健全な状態です。少しずつやっていたのでは間に合わないほどの過密状態なんですね。ですから、その必要性があるところだけで行っています」(半田さん)

間伐材は、その質によりA、B、Cの三つに分けられています。
「A材はいい木とされ、一般建築用材に。B材は大きいけど曲がっている木で、合板用の原木に。C材はパルプに使われます。その他D材(枝葉など)はバイオマス発電の原料にと、無駄なく使っています。我々は、すべて使い切ろうという発想なんです」(半田さん)

同社の年間間伐は、社員一人当たりトラック10t車で120台だといいます。これは、全国でもかなりのレベル。この取組は地域に定着し、評価されているだけでなく、同社の活動に注目した多数の人が全国から視察に訪れています。

「間伐は簡単ではありませんし、当社もまだ十分ではないのですが、林業はどうあるべきか、森をどう作るべきか をいつも考えています。将来のビジョンと具体的なアクションプランによって、組み立てているつもりです」(半田さん)
そう明るく話す半田さんの姿に、森林の可能性が感じられました。

間伐によって健全な森が増えれば、山崩れなどから町や村を守る機能が整備され、さらに二酸化炭素を吸収するなどの森林の機能が活発になります。
カーボン・オフセットでは、こうした間伐の活動から作られたクレジットを選ぶことで、森林を守る取組を応援することもできます。日本の森林の未来に、これからも注目していきましょう。

参考:林野庁「平成23年度 森林・林業白書」、森林・林業学習館

高知県オフセット・クレジット認証センター

高知県高知市伊勢崎町8-24

電話番号088-822-5331
ホームページhttp://www.kochi-sanrin.jp/

(一社)高知県山林協会(県立甫喜ヶ峰森林公園)

高知県香美市土佐山田町平山 甫喜ヶ峰森林公園

電話番号0887-57-9007
ホームページhttp://www.kochi-sanrin.jp/hoki/

株式会社とされいほく

高知県長岡郡大豊町川口2042-16

電話番号0887-72-1230
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