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カーボン・オフセットの現場に潜入する

りんごのスイーツでオフセット ~有限会社ほんだ菓子司の「林檎ロマン」~

りんごのスイーツでオフセット ~有限会社ほんだ菓子司の「林檎ロマン」~

全国で取り組まれているカーボン・オフセットの取組をご紹介する「プロジェクト潜入企画」。
それぞれのプロジェクトをのぞいてみると、取り組んでいる人々の熱い想いやさまざまな”声”が聞こえてきます。
今回は、カーボン・オフセットに取り組み始めた、北海道砂川市の菓子店へ。スイーツとカーボン・オフセットには、どのような関係性が……?
さぁ、行ってみましょう!

3年かけて開発されたりんごのスイーツでオフセット

札幌から北東へ、電車で約1時間。
砂川市に、1944年に創業された老舗の菓子店「ほんだ菓子司」があります。

入店してみると、ありました! カーボン・オフセットのマーク入りのPOPを早速発見。
「林檎ロマンを食べて森を守ろう」と書いてあります。
同店の人気商品「林檎ロマン」が、2014年12月にカーボン・オフセット認証を受け、2015年1月からカーボン・オフセット商品として販売されているそうです。

「りんごを煮たプレザーブというものとホワイトチョコレートを混ぜたクリームを、サブレでサンドしたシンプルな焼き菓子です」
そう教えてくれたのは、「林檎ロマン」を生み出した菓子職人であり、専務の本田啓輔さん。現在、同店の3代目として製菓の現場をまかされています。

実際に「林檎ロマン」をいただいてみると……。
口溶けのいいホワイトチョコレートのクリームの中に、角切りのりんごがゴロゴロと入っています。甘さが口に広がるのと同時に、りんごのシャキッとした爽やかな食感も味わえて、おいしい……! 同店の一番人気のギフトだということにも頷けます。
余計な添加物を使用せず、素材はシンプルさを追求したのだとか。バター・粉乳・砂糖・小麦粉はすべて北海道産だそうです。

「開発には、3年の月日をかけました」と、うれしそうに話す本田さん。
その努力の結晶である「林檎ロマン」を日々作っている工場も案内してもらうことになりました。

地域に余っていたりんごがロングセラー商品に

焼き菓子のおいしそうな香りが立ちこめる工場内。大勢のスタッフが作業をしています。
「林檎ロマン」は、サブレ用の生地を練り、カットしてから、170度で15分焼くのだそうです。一日に焼くサブレの数は、なんと約1万枚! 約5,000個分です。

それを冷まして一日寝かせ、手作業でサンド。簡単そうな作業に見えても、クリームを絞るのには相当な力が要るようです。その後冷却し、包装してようやく完成するといいます。

「夏はクリームが柔らかくなりやすく、冬はかたまりやすい。シンプルな製法ゆえに、季節ごとの天候の影響を受けやすいんです。年間を通じて同じものを常に作るのって、実はとても技術力が問われます」と、本田さん。
手作業で一つひとつを丁寧に仕上げているスタッフさんの姿が印象的でした。

一般的に、北海道にはあまりりんごのイメージがありませんが、そもそもどうしてりんごを使うことになったのでしょう。

「現在代表取締役をしている私の父が、20数年前にアメリカの小さなスーパーを視察した際、店主が良質な商品を見つけてきて販売するなどして、小さい店舗でも生き残る道を進んでいたことに感銘を受けたそうなんです。そこで、うちの菓子店ならではの商品を開発しようと思い立ち、地域に余っていたことで活用したのが、砂川産のりんごでした」(本田さん)

父・日出雄さんが開発したアップルパイ「りんご畑の七日間」は人気を集め、ベストセラー商品に。同店では、りんごを使った商品が他にも増えていきました。
そして菓子修業のため上京していた本田さんが帰郷後、作り上げたのが「林檎ロマン」だったのです。

素材を育む大地を作る「森」を守りたい

カーボン・オフセットを始めた経緯について、本田さんに尋ねました。

「もともとカーボン・オフセットという言葉は知っていたんです。個人的に山登りや川下りが好きで、自然や環境のことにも興味はありましたが、『地球を守ろう!』などと声高に言うのは抵抗があると感じていました。そんな頃、北海道庁の方から『カーボン・オフセットをやってみませんか』と声をかけていただき、弊社の広告費を活用するつもりで、宣伝を兼ねてやってみようと思ったのです」(本田さん)

謙遜するかのように「動機は不純でした」と笑う本田さんですが、その背景には、菓子職人としての熱い“森への想い”があったといいます。

「森を守りたいという気持ちはありました。弊社の商品の『モンブラン』は、高知県の四万十川エリアに生えている栗を使っているんです。一時期、四万十川は荒廃した時期がありました。間伐をする人がいなくなったことで森が荒れ、その結果、川や海も汚くなってしまったのだそうです」(本田さん)

その後、さまざまな人たちの尽力で川はきれいになったものの、現地の人から聞いた次の言葉が本田さんはとても印象に残ったそうです。「川を守るためには、森や山が儲からないといけない。」

「この『儲かる』とは、利益だけを追求することを意味しているのではありません。それなりに経済効果のあるところに働き手が集まることが、環境問題にも関係するという意味です。実は北海道も、森が荒れ放題で人の手が入っていない場所が多いんですよ。製材業をしている親戚の話によると、人の手が入らないと年々木が細くなって朽ちていく一方で、自然が失われていっているそうです」(本田さん)

そうした“森への想い”から、「林檎ロマン」の原材料調達や製造、輸送に関係して排出されるCO2を12tオフセット。オフセットに利用するクレジットには「北海道有林森林吸収エコビジネス支援プロジェクト」や「北海道4町連携による間伐促進型森林づくり事業」などの森林からつくられたクレジットを選びました。

楽しくおいしく食べて、ちょっといいことを

本田さんはカーボン・オフセットの導入後、自身の意識が変わったといいます。

「『林檎ロマン』の製造にまつわるCO2の排出量を計算したことで、日常生活でも、例えば『飛行機ならこれくらいかな』などとCO2を意識することが増えました。でも、弊社では他の商品もたくさん作っています。つまり、オフセットした以上にCO2を排出しているということ。だからといってストイックにやりすぎてつまらなくなってしまうと続かないでしょうし、細くてもいいから長くカーボン・オフセットの活動を続けたいと考えています。お客様にとっても『楽しくおいしく食べて、ちょっといいことをした』というのがいいかなと」(本田さん)

実は北海道でも、地球温暖化を実感しているそうです。「北海道も本当に暑くなりました。昔は暑い日でもカラッとして過ごしやすかったのに、最近はじとっとしています」。
昔はいなかった虫が発生するようになったことで農業にも影響があり、以前は少量で済んでいた農薬の使用量が増えているところもあるといいます。

今後、北海道はりんごやサツマイモの産地に!?

近所のりんご農家・三谷將(まさる)さんのところへも連れていってもらい、環境の変化について聞きました。10数種類のりんごやブルーベリーを作っている農園です。

「昔は10月半ばから畑に霜がおりていましたが、今は11月に数回見られる程度になりました。昔はいなかったセミの声が鳴こえるようにもなって、暖かくなっていることは感じていますね。私のところでは収量に影響はまだ出ていませんが、今後国内の産地が変わることは予想されています」(三谷さん)

残念ながら砂川市のりんご農家は減り続け、現在は三谷さんの1軒だけになってしまったことや、道内産だけではりんごの量が不足しているなどの理由から、「林檎ロマン」は長野産のりんごを使っているそうです。
本田さんは、今後北海道がりんごの産地になっていくことに期待を寄せています。

また、本田さんが期待している農産物がもう一つあるそうです。
「実は最近、砂川市の隣にある滝川市で、なんとサツマイモがとれるようになったんですよ。それも、本州産のサツマイモよりも糖度が高いんです。このサツマイモをりんごとあわせ、新商品としてスイートアップルポテトパイを作りたいと考えています」(本田さん)

消費が社会を変える時代になる

今回の「林檎ロマン」のように、スイーツから環境のことを感じられれば、環境問題がより身近になりそうです。

「お菓子はクリスマスや端午の節句など、一年のうち何回も食べる機会がありますよね。また、冠婚葬祭などの人生の節目にも。人が集まってお祝いなどをするときには必ずそこにお菓子がある。生活と密接に結びついているんです」(本田さん)

そうしたことから、お菓子屋が元気である町は文化レベルが高いのだといいます。例えば、桜餅があれば桃の節句を行うことができます。「お菓子は文化のバロメーター」なのだそう。

本田さんはどのような未来を思い描いているのでしょうか。

「欧米では、商品はもちろんのこと、企業がどういう姿勢でいるかということにお客様が共感して買い物をする風潮が根付き始めています。企業がちゃんとしていることが、企業価値やブランドイメージになっている。日本にそうした時代が到来するのはまだ先かもしれませんが、小さな会社ながらも、今からやっていきたいと思っています。環境のことを自然に考える人が増える、そんな社会になったらいいですね」(本田さん)

有限会社ほんだ菓子司

〒073-0161
北海道砂川市西1条北11丁目2-26(本店)

電話番号0125-52-6321
ホームページhttp://ringo-club.jp/
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